私たちについて
私たちが目指すもの - 再審制度が本当に無実の人を救うものとなるため に
私たちが目指すもの - 再審制度が本当に無実の人を救うものとなるため に
2014 年 3 月 27 日、放火殺人犯として死刑を宣告されていた袴田巖さんが、再審(裁判のやり直し)を認められ、47 年ぶりに釈放されたニュースは、日本中に衝撃を与えました。これ以前にも、足利事件、布川事件、東電 OL 殺人事件、東住吉冤罪事件な
ど、いずれも無期懲役という重罪を言い渡された人たちが、再審によって次々と無罪になりました。
裁判にはこれほどの間違いがあること、無実の人の訴えが踏みにじられ、犯罪者の汚名を着せられることがあること、その冤罪をそそぐためには、膨大な時間と、気の遠くなるような犠牲が必要になることが、あらためて浮き彫りになりました。
私たちは、次の3点の法改正をめざすことを当面の中心的課題として活動します。
新しい冊子はコチラからダウンロード可能です。
https://rain-saishin.org/wp-content/uploads/2021/03/再審_市民の会.pdf
再審のためのすべての証拠の開示を
検察官の不服申立ての禁止を
困難なたたかいを通じて、再審開始決定が出されても、検察官が不服申立(即時抗告や特別抗告)をすることができるために、再審開始が理不尽なほど遅らされたり、はなはだしい場合は取り消されたりしています。これもまた、再審制度を有名無実化する元凶です。
再審における手続きの整備を
現行の刑事訴訟法の規定は、再審の手続きがないに等しい状況です。再審請求を申し立ててもどういった手続きに基づいてすすめるのか、裁判官の職権に委ねています。そのために、裁判所の姿勢によって冤罪からの救済に大きな差が生じる「再審格差」という状況が生まれています。例えば、弁護団が進行協議を求めても全く無視して、いっさいの事実調べも行わず、再審請求を棄却する事例も後を絶ちません。一日も早い、再審に関する手続法の整備が求められています。
結成宣言
1 再審の動向
今日は、「白鳥決定」44周年という、再審の歴史的な記念日にあたります。かつて長きにわたり、再審は「開かずの扉」と言われてきました。その扉を開く鍵となったのが、1975年5月20日の「白鳥決定」です。
最高裁が、「『疑わしきは被告人の利益に』という通常裁判の鉄則は再審にも適用される」との判断を、初めて示したのです。この効果によって、早くも、翌1976年には、弘前、加藤、米谷という3事件の開始決定が立て続けに出ることになり、そして1980年代には、死刑4事件が再審無罪になります。
免田事件の免田さん、財田川事件の谷口さん、松山事件の斉藤さん、島田事件の赤堀さん。無実の死刑囚が4名も死刑台から生還したのです。この前代未聞の出来事は大いに世間を驚かせました。
司法当局は、「法的安定性を損なう」との危機感を強めたのでしょう。当時、日弁連を中心に、全国的な再審法改正運動が盛り上がり、国会に4回も法案が提出されましたが、結局、法改正が実現することはなく、1990年代以降、再審の扉は、再び堅く閉ざされてしまいました。
ところが、2000年代に入ってから、そんな再審の「冬の時代」に、変化の兆しが見え始めます。2002年の大崎第1次から2018年の日野町第2次まで、11事件について開始決定が、相次いでいます。そのうち、2010年足利、11年布川、12年東電OL、16年東住吉の無期懲役4事件、そして、今年3月の松橋事件を加え、現在、5事件が再審無罪にいたっています。
たしかに目ざましい成果です。しかし、決して手放しで喜べない厳しい現実があります。つまり、これら11事件の中で、最終的に再審無罪にいたったのは、今日現在まだ5事件だけであるという見方もできるでしょう。名張第7次や福井のように開始決定が覆されてしまったケースもあります。大崎のように、二度目の開始決定に対してもなお、検察は徹底抗戦を続けています。静岡地裁の英断により、即日釈放された袴田さんは、再び再収監の危険にさらされています。
再審全体を見れば、数多くの事件の中で、たとえ一度でも開始決定を得たことのある事件は、ほんのひとにぎりにすぎません。ほとんどの事件は、暗中模索の苦しい闘いを強いられているのです。
2. 再審制度の不備が顕在化
このような激動の中で、「再審制度の不備」が、度々、世論にも取り上げられるほど顕在化してきました。「裁判体による再審格差」や「検察による再審妨害」は、もはや個別の問題ではなく、制度の問題である。無実の人を誤判から救済するには、「再審法」を改正すべきであるとの共通認識が、広まってきたのです。
「再審法」、おもに、刑事訴訟法の再審についての規定は、戦後、日本国憲法の施行により不利益再審の規定が廃止された以外は、大正11年の旧刑事訴訟法のままで、その条文は、わずか19箇条にすぎません。この時代に取り残された再審の規定を、今こそ「誤判からの救済」という理念にふさわしいものに正すべきときです。
2016年の刑事訴訟法改正では、附則9条3項に、「再審請求審における証拠開示についての検討義務」が盛り込まれました。日弁連は、今年10月の人権擁護大会で「再審法改正」をテーマに分科会を開催するとのことです。このような情勢、各界の声や世論の高まりという現状をふまえ、私たちは、今を歴史的な絶好の機会として、「再審法改正をめざす市民の会」結成に向けての準備を進めてきました。
3.結成までの経緯
昨年12月、準備会の名でリーフレットを作成し、賛同人のお願いをしました。続いて、各方面に運営委員就任のお願いをしました。
2月14日の第1回準備会と、4月2日の第2回準備会には、多数の運営委員予定者が集結し、熱心な議論を経て、会の目的や当面の目標などを確認しました。
4月2日に開催した結成直前プレ企画院内集会には、報道関係を含めて90名が参加しました。松橋事件の具体的な事実を示すことによって、再審の現状や問題点を顕在化させ、再審法改正が喫緊の課題であることを訴えました。
その他に、準備会事務局としては、月1回以上のペースで会議を行ってきました。
本日の正式な結成後、初めてとなる、第1回事務局会議を6月10日(月)、第1回運営委員会を6月26日(水)に開催します。そこで、具体的に討議することになりますが、今後の課題として、以下を予定しています。
① 会の情報発信(本格的なホームページの開設、Facebookなどの立ち上げ)
② 新しいリーフレット、ブックレットの発行
③ 「法改正要綱」の作成
④ 超党派議員連盟の結成に向けての働きかけ
⑤ 各事件の動向と有機的に結合させた運動の展開
⑥ 日弁連などとの連携の強化(10月人権擁護大会「再審法改正分科会」シンポ参加)
最後に
現在のような「再審の活性化」は、先人の努力あってこそのものです。多くの方たちが、不毛の土地に種をまき、冬の時代に耐えて大切に育ててきた、その苗が、今ようやく成長して、収穫期を迎えています。この時代に、生きて、立ち会うことのできた者の責任として、この成果を、さらに豊かに実らせて、次の世代に手渡さなければならないと思っています。
まかり間違っても、再び「冬の時代」に逆行させるようなことが、あってはなりません。そのために、あらゆる知恵を結集し、あらゆる力を尽くして闘ってまいります。
みなさまには、「再審法改正をめざす市民の会」の結成をご承認いただき、全力で応援していただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
会則
再審法改正をめざす市民の会 会則
第1条 名 称
本会の名称は「再審法改正をめざす市民の会」とする。
再審法とは、刑事訴訟法第4編、刑事訴訟規則第5編および関連する法規を指す。
第2条 目 的
本会は、冤罪者を救済するための再審のルール作りを目的とする。
第3条 活 動
1.前条の目的を達成するため、以下3項目の法制化を、当面の中心的活動課題とする。
①再審のためのすべての証拠の開示。
②検察官の不服申立ての禁止。
③再審における手続きの整備。
2.本会は、第2条の目的および前項の中心的活動課題を達成するため、市民、法曹、政治家、各種分野の専門家などの幅広い連帯と協力、信頼に立脚した、世論喚起や、立法府への働きかけその他、必要な活動を創意を凝らして展開する。
第4条 会 員
本会の目的と活動に賛同し、入会金(一口1,000円)を支払う者は、会員となることができる。
第5条 運 営
1.会の運動方針の実現に責任をもつ執行機関として、会員によって構成される運営委員会を設置する。
2.運営委員会は、互選によりそれぞれ数名の共同代表および事務局担当委員を選出する。
3.事務局担当運営委員は、会の日常的運営を担当し、そのために必要に応じて会員の中から事務局員を選任することができる。
第6条 財 政
1.本会の財政は、入会金及び寄附金等でまかなう。
2.会の目的に沿った経済活動(物品・資料等の販売など)を行うことができる。